その異動辞令を見たとき、しばらく画面が頭に入ってこなかった。
新しい部署の組織図。俺の名前の上に、見覚えのある名前があった。
新部長:38歳
俺:48歳
→ 10歳下が、俺の上司になった
別の部署にいた優秀な男だ。仕事ができるのは知っていた。でも、10歳下が自分の上司になるというのは、頭で理解するのと、実際に受け入れるのとでは、まるで違った。
この記事では、48歳の俺が10歳下の上司を持ったときに感じたことと、どう折り合いをつけていったかを書く。同じ立場のオッサン共に、何か届けばいい。
年下の上司ができた日のこと
異動の内示を受けたのは、春先のことだった。
上司からの説明:
「次の期から組織変更がある」
「新しい部署のマネージャーは○○くん」
「彼の下で、これまでの経験を活かして
チームを支えてほしい」
俺の心の中:
「○○くんって…
あの38歳の?」
「俺、48歳なんだが」
「支えてほしい、ってことは
俺が部下ってことだよな」
その場では「分かりました」と冷静に答えた。中間管理職を長くやってきたから、表情に出さないのは得意だ。
でも、家に帰る電車の中で、じわじわと複雑な感情が湧いてきた。
湧いてきた感情:
・悔しさ(追い抜かれた)
・情けなさ(自分は何をしてきたんだ)
・戸惑い(どう接すればいい?)
・かすかな安堵(責任は減るかも)
→ いろんな感情が
ぐちゃぐちゃに混ざっていた
48年生きてきて、こんな気持ちは初めてだった。
最初に感じた「やりにくさ」の正体
新体制が始まって最初の1ヶ月。これが、想像以上にやりにくかった。
やりにくさの場面:
・38歳の上司から指示を受ける
・「○○さん、これお願いできますか」
と気を遣われる
・会議で自分より先に
上司が発言を求められる
・評価面談で、年下に評価される
→ 一つひとつは些細なこと
→ でも、積み重なると
じわじわプライドが削られる
最初は、この「やりにくさ」が相手のせいだと思っていた。
でも、よく考えると違った。
気づいたこと:
新しい上司は
むしろ俺にすごく気を遣っていた
・敬語で話してくれる
・俺の経験を立ててくれる
・無理な指示はしてこない
→ やりにくさの原因は
相手じゃなかった
→ 俺自身の中にある
「年下に使われたくない」
というプライドだった
これに気づいたとき、少し恥ずかしくなった。問題は、外じゃなくて、俺の中にあった。
年下の上司は、今やまったく珍しくない
冷静になって調べてみると、これは俺だけの特殊な状況じゃなかった。
今の時代の現実:
・年功序列はとっくに崩れている
・実力主義・成果主義が進んでいる
・若くして管理職になる人が増えた
・逆に、管理職を外れる中高年も増えた
→ 年下上司・年上部下は
もはや普通のこと
考えてみれば、当たり前の話だ。
俺が20代の頃:
年上の上司に仕えるのが当然だった
年功序列で、待っていれば上がれた
今の時代:
・実力があれば若くても上がる
・年齢は関係ない
・むしろ年齢で判断する方が古い
→ 俺自身、若手には
「実力主義だ」と言ってきた
→ なのに、自分がその立場になると
受け入れられなかった
つまり、俺は時代の変化を頭では分かっていたのに、自分のこととしては受け入れていなかっただけだった。
俺がやめた3つのこと
このままじゃダメだと思って、まず「やめること」を決めた。
① 「昔は〜」と過去を語ること
最初、つい言いそうになった
「俺が若い頃は〜」
「昔のやり方では〜」
→ これは老害の第一歩だ
過去の実績を語る人ほど
今、何もできていない
「昔はすごかった」は
「今はダメ」と同義になる
だから、過去を語るのはやめた
② 露骨に不機嫌な態度を取ること
年下上司の指示に
ため息をついたり
不満そうな顔をしたり
→ これをやると
チーム全体の空気が悪くなる
しかも、一番カッコ悪い
48歳が38歳に
拗ねている図は
誰の目にも見苦しい
→ 態度に出すのをやめた
③ 陰で年下上司の悪口を言うこと
同年代の同僚と飲むと
つい愚痴が出そうになる
「あいつ、まだ38だぞ」
「経験も浅いくせに」
→ でも、これは何も生まない
悪口を言っている間
自分は1ミリも成長しない
むしろ惨めになるだけ
→ 陰口もやめた
この3つをやめるだけで、自分の気持ちがだいぶ整理された。
俺がやってみた3つのこと
「やめること」の次は「やること」を決めた。
① 一人の上司として、普通に敬意を払う
年齢は関係ない
今、彼は俺の上司だ
だから、普通に敬意を払う
普通に報告し、相談する
普通に指示を受ける
「年下だから」という
フィルターを外したら
彼は、ただの優秀な上司だった
② 自分の経験は「求められたら」出す
押し付けるのではなく
求められたときに差し出す
「○○さん、この件
昔どうしてました?」
と聞かれたときだけ
経験を共有する
→ これが一番喜ばれた
→ 「頼れる年上部下」は
チームの財産になれる
③ 年下上司から、素直に学ぶ
38歳の彼は
俺が知らないことを知っていた
・新しいツールの使い方
・若手とのコミュニケーション
・データドリブンな意思決定
→ 年下から学ぶのは
最初は抵抗があった
→ でも、学び始めると
普通に勉強になった
知識に、年齢は関係ない
この3つをやってみて、職場が少しずつ楽になっていった。
一番きつかったのは、プライドを手放すことだった
ここまで書いてきたが、実際のところ、一番きつかったのは何だったか。
年下に指示されることでも
評価されることでもなかった
一番きつかったのは
「自分のプライドを手放す」
という作業そのものだった
俺は、48年かけて積み上げてきた「年上としてのプライド」を、握りしめていた。
心の中の声:
「年上なんだから敬われるべき」
「経験があるんだから上のはず」
「年功序列で、そろそろ俺の番」
→ これが、俺を苦しめていた
→ 時代はとっくに変わっているのに
俺だけが古い物差しを
持ち続けていた
でも、そのプライドを手放したとき、不思議と楽になった。
プライドを手放して気づいたこと:
・年齢で人を測らなくていい
・上下じゃなく、役割の違いだ
・俺は俺の役割を全うすればいい
・年下から学べることは山ほどある
→ 肩の荷が下りた感覚だった
年下の上司ができたことは、最初はショックだった。でも今は、これが俺に「古い価値観を捨てる」きっかけをくれたと思っている。
48歳。まだ、変われる。
そう思えたことが、この異動の一番の収穫だったかもしれない。
まとめ
- ある日、10歳下の38歳が俺の上司になった
- 最初に感じた「やりにくさ」の正体は、相手ではなく自分のプライドだった
- 年下上司・年上部下は、今や珍しくない時代になっている
- やめたこと:「昔は〜」と語る・不機嫌な態度・陰口
- やってみたこと:普通に敬意を払う・経験は求められたら出す・素直に学ぶ
- 一番きつかったのは、年功序列のプライドを手放す作業だった
- プライドを手放したら、不思議と楽になった
- 48歳、まだ変われる
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