「この前、同じ話したよね」
妻が父にそう言った瞬間、空気が固まった。
父は気まずそうに笑って、「そうだったか」と言った。
去年の正月に実家に帰ったときのことだ。84歳の父は、最近物忘れが増えてきた。2歳上の兄も、8歳上の姉も、みんな気づいていた。
「そろそろ介護のこと、考えないとな」
兄がぽつりとそう言った。そのとき俺は48歳。他人事だった「親の介護」が、急に現実として目の前に来た。
親の介護って、実際いくらかかるんだ?
家に帰って真っ先に調べた。そして愕然とした。これは40代のうちに知っておかないと、本当にまずい。
この記事では、俺が実際に調べた親の介護費用のリアルと、40代のうちにやっておくべき準備について書く。
親の介護費用、平均でいくらかかるのか
まずは数字で現実を見た方が早い。
生命保険文化センターの調査
・一時費用(住宅改修・介護ベッドなど)
平均 約74万円
・月額費用
平均 約8.3万円
・介護期間の平均
約5年1ヶ月(61.1ヶ月)
単純計算すると:
74万円 + 8.3万円 × 61ヶ月
= 約580万円
これが「平均」だ
約580万円。
介護期間は4年以上が全体の5割を超えている。10年以上のケースも1割以上ある。
長期化するとこの数字はすぐに倍以上になる。
もし介護期間が10年になったら:
74万円 + 8.3万円 × 120ヶ月
= 約1,070万円
「老後2000万円問題」の半分が
介護費用で消える計算だ
数字を見た瞬間、血の気が引いた。俺の貯金でカバーできる額じゃない。
在宅介護と施設介護、費用はどれくらい違うのか
費用は「どこで介護するか」で大きく変わる。
在宅介護の費用感
月額平均:約4.8万円
・訪問介護サービス
・デイサービス利用料
・福祉用具レンタル
・おむつなど消耗品
メリット:費用が比較的抑えられる
デメリット:家族の負担が大きい
→ 仕事との両立問題
→ 介護離職のリスク
施設介護の費用感
特別養護老人ホーム(特養)
月額 約10〜14万円
入居待ち数年のケースも多い
介護老人保健施設(老健)
月額 約10〜15万円
原則3〜6ヶ月の入所
介護付き有料老人ホーム
月額 約15〜30万円+入居一時金
入居一時金は数百万〜数千万円
サービス付き高齢者向け住宅
月額 約15〜25万円
施設に入れると月10万〜30万円。これが何年続くかわからない。
「在宅で粘る」か「施設に入れる」かは、家族の状況とお金の両面で決めるしかない。
公的介護保険でカバーできる範囲を知っておく
ここを知らないと不安だけが先に立つ。公的な仕組みはちゃんとある。
介護保険の基本
40歳以上になると全員加入
(給料から天引きされている)
65歳以上で要介護認定を受けると
原則1割負担でサービスを使える
(所得が高いと2〜3割負担)
要介護度別の月額支給限度額
・要支援1:約5万円
・要支援2:約10.5万円
・要介護1:約16.7万円
・要介護2:約19.7万円
・要介護3:約27万円
・要介護4:約30.9万円
・要介護5:約36.2万円
この範囲内なら1割負担で済む
つまり要介護3なら、月27万円のサービスを2.7万円で使える計算になる。
高額介護サービス費制度
自己負担が一定額を超えると、超過分が戻ってくる制度もある。
一般的な所得層なら
月4万4,400円が上限
(これを超えた分は払い戻し)
所得が低い場合はさらに下がる
ここを押さえると、「青天井で金がかかる」という恐怖は少し和らぐ。
それでも親の介護費用は「親のお金で」が原則
ここが一番重要な話だ。
親の介護費用は、親のお金で払うのが原則。
自分の貯金を削って親の介護をすると
・自分の老後資金が崩れる
・自分の子どもに負担が連鎖する
・共倒れになる
だからまず確認すべきは:
① 親の預貯金
② 親の年金額
③ 親が加入している保険
④ 親の持ち家の評価額
これを40代のうちに把握しておくのが、一番大事な準備だ。
ただし、これを親に直接聞くのは難しい。
「金の話か」と嫌がられる。俺も躊躇した。
40代のうちにやっておくべき4つの準備
父の物忘れが増えてから、姉・兄と動き始めた。その中で「これは早めにやっておいて正解だった」ことを整理する。
① 兄弟姉妹で現状を共有する
まず一番大事なのはこれ
・親の健康状態
・親の資産状況
・誰が何を担当するか
俺は姉・兄とLINEグループを作った
「親のこと」という身も蓋もない名前で
週1回、何かあったら共有するようにした
これだけで不安がだいぶ減った
一人で抱えると必ずつぶれる。
② 親の資産・年金を把握する
正面から聞くのは角が立つ
だから自然な流れで聞いた
「最近、詐欺が多いから
通帳どこにあるか教えといて」
「何かあったときに困るから
年金額だけ教えて」
エンディングノートをプレゼントする
という手もある
(書いてもらうハードルは高いが)
親が元気なうちが一番聞きやすい。認知症が進むと手遅れになる。
③ 介護休業制度を知っておく
知らない人が多いが
会社員には「介護休業」がある
・対象家族1人につき通算93日
・3回まで分割して取得可能
・雇用保険から給付金あり
(賃金の67%)
介護離職するくらいなら
制度を使い倒した方がいい
うちの会社にもあるはずなのに
俺は今回調べるまで知らなかった
人事部に確認しておくだけで安心感が違う。
④ 自分の老後資金と切り分ける
親の介護に自分のNISAや貯金を
全額投入してはいけない
一番キツいのは:
親の介護が終わったあとに
自分の老後が始まることだ
・親の介護費用は親のお金で
・足りない分だけ兄弟姉妹で分担
・自分の老後資金は死守する
この線引きを最初に決めておく
感情で動くと、必ず自分が疲弊する。ルールで動くしかない。
一番きつかったのは「親が弱っていく現実」だった
正月に父と会ったときの話に戻る。
父は昔から頑固で
家族を引っ張るタイプの人だった
その父が
同じ話を何度もする
昨日のことを忘れる
「あれ」「それ」が増える
「歳を取ったな」では済まされない
何かが確実に変わってきている
介護費用を調べながら
一番きつかったのは数字じゃなかった
「父がもう昔の父じゃない」
という現実だった
金の話は計算すればいい。でも親が弱っていく現実は、計算じゃどうにもならない。
それでも、数字を知って準備しておくことで、少なくとも「金で家族がバラバラになる」事態は避けられる。
これが40代のうちにやるべきことだと、今は思っている。
まとめ
- 親の介護費用の平均は約580万円(介護期間約5年)
- 長期化すれば1,000万円を超えるケースもある
- 在宅と施設で費用は大きく変わる(月5万〜30万円)
- 公的介護保険で1割負担、高額介護サービス費で上限もある
- 親の介護費用は「親のお金で」が大原則
- 40代のうちに兄弟姉妹で共有・親の資産把握・介護休業制度確認・老後資金の切り分けをやっておく
- 金の不安より、親が弱っていく現実の方が実はキツい
▼ 次はこちらを読んでみてください 40代・50代から始める資産形成【俺が実際にやって効果があったこと】

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